1)アドルノ音楽哲学の理論的研究に関しては、平成11年2月にアドルノの『マーラー』を翻訳出版(法政大学出版局)の後、平成11年度はアドルノの『音楽社会学序説』(平凡社)の解説を執筆、現在はアドルノの『新音楽の哲学』(平凡社)の翻訳を進行中(平凡社より出版予定)。それ以外に、徳永恂編のアドルノに関する論集に、「グロバリゼーション時代のアドルノ理論-<音楽と自然>の問題を中心に」という論文を執筆(校正中、平凡社より刊行予定)。 2)アドルノ理論と密接に関係する音楽時間論の比較文化論的展開に関する発表を民族芸術学会の例会で行い、同学会の機関紙『民族芸術』に論文「音楽と時間-世界化の時代の音楽時間論」を発表した。また音楽学会の全国大会のシンポジウムで、ベートーヴェン論に関わる発表を行った。さらに民族音楽学会の大会のシンポジウムにおいて、都市における現代の民俗音楽活動の一例として、札幌のヨサコイ・ソーラン祭りに関する発表を行った。 3)アジアの近代化と音楽文化の変容の実態を見るために、中国の西安市と寧夏回族自治区において、芸術・音楽活動、および回族の文化に関わる実地調査を行った。さらに同じ視点から、インドのムンバイ、アグラ、ジャイプール、デリーの各市で観光に関わる実地調査を行った。またドイツとイタリアで、アドルノ音楽論に関わる現代音楽関係の研究資料収集を行った。 以上、アジアの近代化に伴って生じている様々な問題を、アドルノの批判理論の今日的再生によって考えようとする研究課題は着実に進行中である。
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