平成13年度は本研究課題の最終年に当り、主として研究成果をまとめることに重点を置いた。 1)海外での活動としては(1)ドイツ・ベルリンで、アドルノと関係の深いシェーンベルクとベルリンに関する国際シンポジウムに出席、および研究資料収集を行った。(2)世界の音楽シーンを考える際に非常に重要なブラックミュージックの広がりとその意味を考える観点から、アメリカ音楽学会とシカゴ大学ブラックミュージック研究所の共同主催による「ブラックミュージックに関する国際会議」(トリニダードトバゴ)に出席した。 2)国内での成果としては、(1)「アドルノ理論と民族音楽学」の再校を完成。『民族音楽学の再構築』という共著(水野信男編、世界思想社)の一部として出版した。(2)「パン・アフリカン・ミュージックと現代の音楽文化」という論文を完成させた(平成14年度に世界思想社より出版予定)。(3)「音楽社会学の課題と方法-<近代化>と<グローバリゼーション>をめぐって」という論考が中部大学高等学術研究所より『音楽(音文化)研究の課題と展望』の一部として印刷出版された。(4)「アドルノの後期ベートーヴェン論」に関する論考を執筆した(平成14年度に『転換期の音楽』として音楽之友社から出版予定)。(5)『アドルノ音楽哲学と現代』という本を執筆中である(平凡社より出版予定)。 ・なお、9月11日のテロ事件の影響で、9月中旬に計画していたドイツ行きを11月末〜12月に延期した。またベルリン滞在中にパスポートの盗難にあい、後日新たに取得せねばならなくなったため、当初予定していた香港の調査を中止せざるをえなかった。研究成果報告書は期日までに完成させる見込みである。またこの研究は今後も「グローバリゼーション時代の音楽批判理論」という形で視点を拡大して続けて行くつもりである。
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