本年度は研究初年度として、主に関西地方を中心に江戸時代の動物画作品を集中的に調査する作業を行った。その結果、当初予測していた以上にはるかに作品数が多く遺存していることが明らかとなったために、国内出張の回数が予定よりも増えた。調査はいまだ終了してはおらず、平成12年度も継続的に行う予定である。今年度は18世紀の円山四条派を集中的に調査したが、来年度以降は森派や幕末期の四条派に取り組む予定である。 調査では写真撮影を行った。そしてそれらを作家別と作品系統別のふたつの方法で整理し、系統的に分類する作業を行い、それらは写真資料およびデータの詳細を紙面上でのファイル化とコンピュータでのデータベース化する両方の方向で現在作業を準備中である。この作業を行うことによって、従来知られて来ることのなかった江戸時代動物画の全体像が見えてくるものと期待されるが、整理には思いのほか手間がかかっており、調査と同時進行で進めているため来年度も継続される。また一方では、アメリカ・フランス・イギリスでの西洋美術研究おける動物画研究の従来研究を洗い直し、江戸時代絵画研究においてどのような形で応用出来るかを模索した。これについては、図像学的見地とともに比較文化論的研究の方法が援用できるものと考えられため、本研究におけるはじめての研究成果はその視点でまとめるべく進めているが、具体的な論文としての成果は「円山四条派における動物画の意味(仮題)」として2000年度中に勤務先の大学紀要に発表する予定である。
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