1コンピュータ利用による文様分析 コンピュータ利用による文様分析の具体的作業は、(1)玉虫厨子透彫り金具文様と(2)法隆寺献納宝物頭光背33面を対象として行った。 (1)では、従来の研究がモティーフによる系統分類を主眼となし、個々の文様に対する基礎的造形分析が欠如していたことを問題化した。これまで最も論議されてきた須弥座腰部柱の〓龍文系猪目形空孔文に対して、朝鮮扶余陵山里古墳出土金具文様との比較分解構成図を作成することにより、小杉一雄の提唱以来通説化していた両文様の「複合形組成法」が恣意的作図による立論であることを明らかにし、さらにこれらを漢代爬虫唐草の系譜とする一元的起源論の問題点を明確にした。 (2)では、頭光背33面の装飾文様を、モティーフ分類ではなく、装飾空間に対して文様がいかに造形化(布置構成)されるかという視点より分析した。特に圏帯部に対しては、これを62例の円圏帯装飾空間に分け、各円圏帯に施される文様より単位文様を弁別し、その布置構成法の分類整理をおこなった。 2文様作例データベースの作成 文様史時代区分のための準備作業として、文様作例約826、データ数約1243件のデータベースを、以下の検索目的・用途に応じて3種類試作した。 (1)作例データを一覧表として検索するための表計算型データベース(Microsoft Excel 9.0J使用) (2)作例画像を一覧検索するための画像データベース(Extensis Portfolio 5.0J使用) (3)1作例に関する複数画像と作例データを検索するためのカード型データベース(File Maker Pro5使用)文様作例を造形的な視点から検索可能とし、その時代区分に有効性をもたせるため、(3)のカテゴリは文様要素・単位文様・文様ユニットの3種に分け、フィールド項目には、(a)装飾空間の形状(文様の布置される装飾空間の形状分類)、(b)文様名称(モティーフ語と形式語に区分)、(c)装飾空間への文様布置構成法、を追加設計した。
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