研究概要 |
人々は,種々の状況において判断を行なったり,意思決定を行っている。本研究では,この状況依存的判断や意思決定を統一的な観点から説明できるのようにするための理論的および実験的研究を,行ったものである。本研究では,まず文献研究をもとに,国内外の状況依存的判断と意思決定に関する理論的研究と実験的研究を収集し,その批判的検討を行い,理論的展望と実験および調査を計画した。理論的研究においては,従来の理論の問題点を改善して,「心的モノサシ」のモデルを提唱した。心的モノサシのモデルでは,人々の判断と意思決定においては,人々は1次元的な心的モノサシを作りやすいように,状況を主観的に構成し,その主観的状況を台集合としてその上に心的モノサシを構成し,判断するということが仮定されている。この心的モノサシのモデルにおいては,近年の効用理論やプロスペクト理論とは異なり,効用や価値と主観的確率とを別の関数して扱わず基本的に同じ評価関数と考えている。また,このモデルでは,従来の諸理論とは異なり,心的モノサシの幅を越えた場合の判断の不安定とその他の性質についても予測を行っている。このモデルの数理モデルの作成,計量モデルの作成がなされ,実験においては,一般市民を対象にした価値関数実験(実験1)、生命の価値に関する実験(実験2)、大きさのマグニチュード推定による知覚判断実験(実験3)、大きさの異同判断実験(実験4)、重さのマグニチュ-ド推定による知覚実験(実験5)、重さの系列実験(実験6)、確率荷重判断実験(実験7)を行い、心理計量的手法により評価関数を同定した。
|