本研究では、ニューラルネットに統計的に最適な反応パターンを学習させることで、理想観察者の神経生理学的反応を構築し、ネットワークのどの構成要素の欠落、あるいは損傷が、人間の反応パターンと類似するかを検討することを目的としている。 本年度の研究実績は、以下の通りである。 (1)理想観察者をニューラルネットワーク上で形成するため、入力実現、ニューラルネットの構造、学習アルゴリズムの検討を行った。入力表現では、外部ノイズの分散が問題となった。本年度は、低次過程の理想観察者を想定し、両眼立体視に関する理想観察者の形成を検討した。この際、ニューラルネットを計算機上でシュミレートするためには、構成要素とリンク数に応じて膨大な計算量が生じる、という問題が生じた。これを解決するための高速処理のアルゴリズムと、さらに処理結果のビジュアライゼイションソフトの開発に着手したことも、本年度の成果の一部である。 (2)ニューラルネットワーク上で形成された理想観察者の構成部分を段階的に欠損させ、それが課題遂行に及ぼす影響を検討した。そして、これまでに得られた我々のデータと対応させることで、内部ノイズやサンプリング特性の視覚軽路上での部位推定を行った。さらに、方位検出の時間的加算と空間的加算の実験、オブジェクト面上のパターン認知の実験を遂行し、モデルの検証を行った。
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