本研究の目的は、まず、理想観察者という、統計的に理想的な、すなわち課題達成の上限を示す観察者を想定し、それとの対比で、人間の情報処理過程の効率を算出して、視覚情報処理の低次過程(運動位相差検出、奥行き検出など)から高次過程(オブジェクト認知など)の特性を検討する。さらに、ニューラルネットに統計的に最適な反応パターンを学習させることで、理想観察者の神経生理学的対応を構築し、ネットワークのどの構成要素の欠落、あるいは損傷が、人間の反応パターンと類似するかを検討することである。 本研究の成果は以下の通りである。 (1)3次元ノイズ曲面上の対称パターン検出における統計的効率を求め、面形成と対称性パターン検出に関するモデル構築を行った。。 (2)奥行き傾斜知覚における両眼視差と運動視差の統合の問題を、効率分析アプローチで検討し、両情報のサンプリングの違いを明確にした。。 (3)線分群の全体的方位知覚に関する時間・空間加重の特性に関し、効率分析を行い、時間優位性に関するメカニズムの違いを解明した。 (4)理想観察者をニューラルネットワークで形成するためのアルゴリズムを構築した。 (5)上記のアルゴリズムに則り、運動による構造復元の問題に、2階層の理想観察者ニューラルネットワークモデルを構築した。 (6)同様に、上記、(1)、(3)に関するニューラルネットモデルを構築中である。 (7)ニューラルネットに欠損を生じさせ、人間の成績をシミュレートするアルゴリズムを考案した。
|