脳内自己刺激行動において重要だとされてきた腹側被蓋野を起始核として側坐核、前頭前野に投射するドーパミン神経は、Yeomansら(1985)、Blahaら(1996)の研究によって中脳橋被蓋野(mesopontin tegmentum)からのアセチルコリンにより調節を受けていることが知られるようになった。また、脳内自己刺激に伴うFos蛋白の発現部位の多くがアセチルコリン起始核であることも見いだされている(Nakaharaら、1999)。これらのことから、自己刺激行動にアセチルコリンが重要な役割を果たしていると考えられる。 本年度は、マイクロダイアリシス法により中脳橋被蓋野とその投射野である腹側被蓋野における自己刺激行動中のアセチルコリン放出の変化を調べ、また、中脳橋被蓋野において自己刺激行動後に発現するFos蛋白とアセチルコリン生合成酵素(ChAT)の二重染色を行った。 その結果、アセチルコリンの細胞外濃度は中脳橋被蓋野、腹側被蓋野共に自己刺激中に有意に上昇した。また、二重染色の結果、Fos陽性細胞は自己刺激中に有意に増加したが、そのほとんどはChAT細胞上にはなかった。 これらのこのことから、脳内自己刺激により中脳橋被蓋野のコリン作動性神経の投射野においてアセチルコリンの放出量は増大するが、その生合成酵素(ChAT)の活性化には転写修飾因子Fosを必要としないことが示唆された(投稿中)。
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