本研究では、PPTgとLDTgから投射するコリン作動性神経系が脳内報酬系においていかなる役割を果たすかについて検索した。 平成11年度は、免疫組織学報とマイクロダイアリシス法を用いて、脳内報酬系に対するるPPTgとLDTgのコリン作動性神経の関与の有無について検討を加えた。具体的には、(1)自己刺激を行わせたラット脳のPPTgとLDTgにおいて、Fos蛋白(活性化ニューロンの指標)の発現が見られるか、(2)PPTgとLDTgのコリン作動性神経の投射野であるVTAにおいて自己刺激行動に伴うアセチルコリン遊離の増加が見られるか、の2点について調べた。 その結果、(1)自己刺激後、PPTgとLDTgの両アセチルコリン神経核でFos陽性細胞数の有意な増加が認められた。また、Fos発現は両神経核共に刺激側優位であった。しかしながら、発現したFosの多くはChAT陽性細胞上には認められなかった。一方、(2)VTAのアセチルコリン放出量は自己刺激中に有意に上昇した。以上のことから自己刺激行動に伴うアセチルコリンの放出量の増加には転写調節因子Fosは関与しないことが示唆された。 平成12年度は、VTAにアセチルコリン遮断薬を局所投与し、反応一周波数曲線法を用いて自己刺激による報酬閾値にいかなる効果をもたらすかを調べた。 その結果、アセチルコリンニコチン性受容体遮断薬メカミラミンにより報酬閾値の有意な上昇が認められた。したがって、脳内自己刺激による報酬効果の発現には、既に知られているムスカリン性受容体のみならずニコチン受容体も関与することが示唆された。
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