研究概要 |
本研究の目的は、刺激の不確定性と感覚尺度の多次元性を仮定した新たな心理物理学モデルを開発し、その性能を実験的に検討することである。今年度は、モデルの開発と刺激不確定性を操作した実験を行った。 モデルの開発では、サーストン・モデルに刺激不確定性と多次元尺度を導入することを試みた。先ず、刺激不確定性は感覚量の分布に影響を与えると仮定し、刺激不確定性を感覚量の分散のパラメータとした。次に、感覚分布と判断基準を多次元尺度上で表現することを試みた。従って、感覚量の確率密度分布は多次元正規分布となり、2つの分布間の距離はユークリッド距離で表現されることになる。現段階では、多次元正規分布による表現に技術的な問題があり、数値計算やシミュレーションをするまでには至っていない。これは次年度の検討課題となる。 実験では、聴覚次元と視覚次元における刺激不確定性の効果を検討した。聴覚次元では、強度弁別課題において刺激周波数の不確定性を操作した。毎試行ランダムに変化する刺激周波数の数を3〜5とし、聴取者の強度分解能と弁別反応時間を測定した。その結果、周波数不確定性によって分解能は低下し、反応時間も長くなった(草野・二口・森,1999:森・二口,1999)。視覚次元では刺激の空間位置の不確定性を検討した。実験は視覚探索課題で行い、刺激呈示と実験制御には視覚刺激呈示システム(Cambridge Research System Ltd.,VSG2/3 & OptiCAL)を用いた。その結果、不確定性の効果はあるものの、その効果の程度は刺激の空間的配置に大きく左右されることが分かった。この結果を心理計量学会(Los Angeles,U.S.A)で発表した。 共同研究者の中村は空間位置の認識に関する実験とモデル開発を行い、積山は視覚と聴覚の相互作用に関する研究を進めた。
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