研究概要 |
本研究の目的は、刺激の不確定性と感覚尺度の多次元性を仮定した心理物理学モデルを開発するとともに、不確定性と多次元性の効果を実験的に検討することである。前年度も指摘したように、モデル開発では多次元正規分布の表現に技術的な問題があり、未だ十分な解決法が見出せていない。そこで、今年度は刺激不確定性と多次元性の実験的検討を主に行った。 先ず、刺激音の周波数と空間位置の2次元に関してそれぞれ不確定性を導入するとともに、2つの次元間の相互作用がいかに刺激の強度分解能に影響を及ぼすかを検討した。刺激音の周波数にはこれまでの研究と同様、70Hz〜8000Hzで等対数間隔とする5種類を用いた(二口・草野・森,印刷中)。空間位置には刺激を呈示するヘッドホンの左右を用いた。その結果、周波数の不確定性と同様、空間位置の不確定性も強度分解能を低下させること、周波数手がかりの効果が空間位置の不確定性により変化することを明らかにした(二口・森,2000)。 次に、視覚刺激の空間位置と輝度の2っの次元が方向検出能にいかに影響するかを視覚探索実験で検討した。実験制御と刺激呈示には、視覚刺激呈示システムボード(Cambridge Research System Ltd.,VSG2/5)を増設したコンピュータとディスプレイ(前年度購入)を用いた。実験結果は、方向検出能が空間位置の不確定性や輝度、コントラストに左右されることを示した。この結果を心理計量学会(New Orleans,U.S.A.)で報告した。 現在、この2年間の成果を投稿論文にまとめるとともに(Futakuchi & Mori,提出中;Mori,Kataoka,& Kusano,準備中;Mori & Ohtani,提出中)、研究成果報告書を作成中である。
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