研究概要 |
ラットを長期飼育実験箱において飼育し,採餌行動と摂水行動の生起の過程を,明期と暗期との関係の下に記録した.第1実験においては,12時間で明期と暗期が交替する周期のもとで採餌と摂水が計測された.15日間の自由摂食と自由摂水の条件下では,両行動とも暗期に集中的に生起した.続く15日間は摂食に関してレバー押し課題を導入して摂食のためのコストを高くしたが,摂食も摂水も,やはり夜間に集中的に生起した.第2実験では摂食行動と摂水行動がおもに暗期において生起することを確認するとともに,12時間の暗期を6時間に短縮し,その効果を確認した.12時間の暗期においては集中的摂食行動が3回出現したが,6時間の暗期においては2回出現した.また,暗期は短縮されても,採餌行動も摂水行動も短縮されていない状況と同様に,おもに暗期に出現した.集中的な摂食が安定して出現するのは,暗期の終了直前とされるが,第2実験においては暗期終了時に近くはあるが必ずしも直前とはいえない可能性が確認され,個体差と考えられた.第3実験では,12時間で明期と暗期が交替する条件のもとで,はじめに(第1段階)15日間の自由摂食と自由摂水が観察された.ここでも暗期におもに摂食と摂水が行われ,従来どおりの行動の配分が確認された. 第2段階では摂食の機会を明期だけに限定し,明暗両期間に自由摂食が可能な状態では暗期にほとんどの摂食行動が生起する状況から,暗期の摂食が不可能な状況に設定を切り替えて,摂食行動の生起の仕方を確認した.ラットは暗期が終了して明期が開始し,摂食が可能になるとその直後から摂食を最も高い集中度で開始し徐々に減少させた.巣部を出てオープンフィールドで過ごすことは摂食に必要な行動であるが,摂食が明期に限定されて可能な状態にあってもラットがオープンフィールドに出るのは,おもに暗期においてであった.明期にしか摂食ができなくてもラットは,わずかな時間で,暗期に摂食が可能なときに暗期に摂取する量とほぼ同量の餌を摂取した.ラットは生来的に明期に摂食をすることを避ける傾向を持つことが確認された.
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