研究概要 |
(1)感情喚起スライドに対する心臓血管系反応:感情喚起スライドIAPSから「快」,「不快」,「中性」スライドを各6枚選択.50s毎の呈示中に心拍間隔(IBI)と血圧(SBP, MBP, DBP)を測定し,呈示終了毎に感情を評定した.その結果,感情評定値とIAPS感情価には高相関が得られた.呈示直後10拍のIBIは,「不快」で延長し,「快」と「中性」では顕著な変化をみなかった.呈示直後10sのMBPとDBPは減少方向に推移した.以上の結果から,「不快」刺激と心臓血管系反応の強い関連性が指摘された. (2)映像刺激に対する自律神経系の応答:各10minに編集した3種類の動画映像(正・負の情動喚起および中性刺激)提示中に,血圧(BP),心拍数(HR),指尖表面皮膚温(FST)を同時測定し,呈示後に情動喚起状態を評定した.BPとHRは正の情動喚起時に低下し,負のそれでは上昇した.BP上昇は末梢血管抵抗とHRの上昇に,また負のそれで低下したFSTは,末梢血管抵抗の上昇によるものと考えた.認知的には環境刺激の「取込み」と「拒絶」が,「正」と「負」の情動喚起にそれぞれ対応したものと考察した. (3)強度の異なる運動が感情と脳波の偏側性に及ぼす効果:快適自己ペースと70%VO_2max運動(各15min)下に,運動前後の安静時EEGを前頭部から記録した.感情変化は,運動前・中・終了・回復の時点で調べた.両運動とも状態不安は,終了直後から回復60minに至るまで軽減した.快適自己ペースでは,運動前・後の前頭部αパワーに左右差はなかった.一方,70%VO_2maxでは運動前はαパワーに左右差がなかったが,運動後には左前頭部が持続的に賦活していた.左前頭部αパワーの減衰と,運動後の不安軽減・快感情発現には強い相互関連が示唆された.
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