研究概要 |
本研究は、人間の分配行動の社会的発生基盤を、近年急速に興隆しつつある進化心理学的な視点から理論的・実証的に検討した。人類学や社会学の研究が繰り返し示すように、社会的場面における他者との分配や資源のやりとりが、人間生活の中で極めて大きな比重を有することは言うまでもない。本研究では、コンピュータ・シミュレーションと数理モデルを用いた理論的分析、(b)そこから導かれた仮説の実験的検証という2つの柱を軸に、人間の分配行動の適応的な基盤について組織的な検討を行った。進化ゲームモデルに基づく解析の結果、資源獲得に不確実性が伴う場合、その資源を広く共有財として提供する行動が、進化的安定戦略となることが明らかにされた。この解析結果をもとに、資源獲得の不確実性が人間行動における分配傾向を実際に規定するかどうかを実証的に検討するため、日米の大学生被験者を対象にした一連の一般交換実験を実施した。これらの国際比較実験の結果、文化差を超え、「資源獲得における不確実性が増大するに伴いその資源が共有財としての性格をもつようになり、一般交換の対象とされやすくなる」という先の命題が経験的に確証された。以上の研究成果は、Personality and Social Psychology Review, Evolution and Human Behavior, Group Processes and Intergroup Relationsなどの国際学術誌に公刊されている。
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