統計的データ解析の手法である因子分析・主成分分析では、通常、一旦求めた解の座標値は抽出した因子・主成分の解釈が容易になるように、各種の方法で変換して用いられる(回転解という)。本研究の目的はこれらの回転解の標本変動を評価する統計的指標(標準誤差)の理論整備を行い、標準誤差を実際のデータ解析に利用できるソフトウェアーを作成することである。平成11年度の研究成果は次のとおりである。 1.回転解の標本変動に関する理論の整備 (1)一般利用者が多用する回転解のグループ(Kaiserの規準化を伴う諸方法)について、標準誤差を求める一般的な計算法を得た。これまで、研究代表者によって直交解のノーマルオーソマックス法(「ノーマル」は上記Kaiserの規準化を伴う意)については結果が得られていた。今回は新たに、斜交解の主要なものを含む一般4次基準斜交解についてノーマル解の標準誤差を導出した。 (2)主成分分析の回転解についても因子分析の回転解の標準誤差を求める方式(拡大された情報行列)を応用し、その標準誤差を得た。これまで、観測変数の標準誤差が1に規準化されないデータについては結果が得られていたが、規準化されたデータ(相関行列)については、当研究により初めて得られた。 2.ソフトウェアーの仕様の検討:因子分析・主成分分析においてソフトウェアーに組み込む回転解の種類、入力データ及び出力内容(標準誤差等)の基本仕様を決定した。 3.研究成果発表:1の研究成果と関連する理論的な成果をひとつの国際会議及び3つの国内学会で発表した。また、これらの成果を国際誌3編、国内誌3編の論文として投稿し、掲載または掲載決定となった。
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