不登校の発生要因の一つとして、児童・生徒のソーシャル・スキルの未熟さがあることが指摘されている。そこで、本研究では、現在の児童・生徒が学校生活における対人交流、集団生活の中で活用しているソーシャル・スキルの内容とその構造を明らかにした。その結果、親和的で意欲的な学校生活を送っている児童・生徒は、本研究で明示されたソーシャル・スキルについて、その活用の高さとバランスのよさが認められた。 次に、学級集団の状態によってその学級に所属している児童・生徒は、ソーシャル・スキルの活用に差異があることが明らかになった。すなわち、ソーシャル・スキルを活用できる能力があっても、学級集団の状態によっては、実際に活用していないことが明らかになった。つまり、学級での諸々の活動を通して児童・生徒同士の対人交流が促進されず、親和的な対人交流や集団生活体験を通して促進される心理社会的な発達に、プラスに寄与することが少ないことが考えられた。したがって、学級集団の状態、ソーシャル・スキルの活用の実態を押さえ、実態に応じたソーシャル・スキル・トレーニングを前提としたグループアプローチを、学級集団を単位に実施すれば、児童・生徒のソーシャル・スキルの能力と活用度は向上し、その結果、児童・生徒の学級生活の満足感と学級集団の状態は向上すると考えた。代表的な学級集団の状態を示す小・中学校の学級を抽出して、各学級に応じたプログラムを作成して介入した結果、仮説を支持する結果が得られた。 結論として、学級集団の状態、児童・生徒のソーシャル・スキルの活用の実態を押さえ、教師が学級集団を単位として、ソーシャル・スキル・トレーニングを前提としたグループアプローチを実施することによって、児童・生徒同士の親和的な対人交流や集団生活体験が促進され、不登校の発生の予防につながることが示唆された。
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