研究概要 |
本研究は、状況要因が特性推論過程に及ぼす影響について、行為頻度を手がかりに検討することを目的としている。最終年度にあたる本年度は、以下の目的に添って研究を行った。1)状況分類枠の精微化:昨年度の研究結果をもとに、状況分類を行う基本的な枠組みについてのモデル化を行い、「状況」は、環境(形態的)、場面(目的的)、役割(関係的)、機能(認知的)という4つの視点に文脈(時間的)という視点を加えた5つの視点から、同時並列処理的に把握しうるという観点を明らかにした。このうち、場面分類については、国際学会を含む2つの学会で、理論的観点の紹介も含めた報告を行った。役割分類については、来年度の学会で成果報告を予定している。環境、機能に関する分類もおおむね終了しているが、文脈的な視点に関しては辞書的アプローチには限界があり、別個の観点から研究を行う必要性があるという示唆を得た。2)状況要因が特性推論過程に及ぼす役割の検討:分類の確定した場面的手がかりを用いて、特性5因子(ビッグ・ファイブ)との結びつきを検討した。その結果、外向性は余暇や祝祭場面、誠実性は研究教育、宗教場面、情堵安定性は危機場面で可視性が高まることが示された。さらに、各場面でそれぞれの性格特性と結びつきやすい行為を抽出し、その行為の頻度と特性推論(特性を保有する程度の評定)との相関を求め、場面・特性ごとに整理した結果、外向性では余暇場面や取引場面、誠実性では研究教育場面で、行為頻度による推測が強まることなどが示された。これらの研究結果は、特性推論過程に,状況要因がきわめて重要な影響をもつことを示している。今後、同様の分析を役割分類を初めとする他の分類を基盤として継続する予定である。また場面的特性を画像情報として呈示し特性推論との関連を検討する試みも進めているが、現状では明確な結論を得るには至っていない。
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