1.収集済みの沖縄シャーマニズムの調査データをもとに、沖縄の女性の長寿の促進要因についての次の作業仮説について再検討した。(1)シャーマン「ユタ」がリアルな他界観念を強化し死の緊張を緩和する。(2)日常的なウグアン(祖先祭祀儀礼)が一種のカタルシスや自己解放の機会を与えている。(3)長年のウグアンによる変性意識状態への習慣が一種の自己治癒機能をもつ。 2.上記の仮説(3)についての基礎資料を収集するために、沖縄本島北部の老人ホーム入園者の事例を日常に観察している園の生活指導員から聞き取り、本部町の老人科病院であるノーブル・メディカル・センターの入院患者について看護婦から聞き取る事例研究に着手した。 3.沖縄の地域社会(シマ)が歴史的に形成してきた死生観、通過儀礼、老人介護の伝統が、平成12年度から全国一律に導入される老人介護保険制度によってどのように変容するのかを長期的に追跡調査する計画を練った。主要なフィールドとして、沖縄県と沖縄国際大学が公民館付設の老人ホームを建設・調査しようとしている竹富町の波照間島の計画に参加した。 4.ユタを中心とする沖縄シャーマニズムの特徴を明らかにするため、成巫過程での修行、人格変容・変換、変性意識状態、パーソナリティ特性、信仰治療の実践、コスモロジーなどについて、東北の津軽地方のシャーマン「イタコ」「ゴミソ」の事例、および文献により台湾の「タンキー」、韓国の「ム-ダン」と比較考察した。
|