研究概要 |
本年度は,1.昨年,分散効果の再活性化説を基に考案した効果的な分散学習方式,Low-First方式の効果を実践的に検証し,2.問題点と原因を明らかにし,3.これを作業記憶容量の個人差や課題の難易度の違いに対応できる柔軟な方式に発展させることを目的とした. 1.前半は,遠隔講義で使用している種々のCAIにLow-First方式を適用してその効果を実践的に検証し(教育システム情報学会誌,2000;日本教育工学会誌,2000;Educational Technology Research,2000),再活性化モデルによるシミュレーションで被験者の学習過程が極めて正確に再現できることを示した(信州大学工学部紀要,2000). 2.次に,1の中で見出された約2割の被験者の再生率の伸び悩みの問題の原因を分析し,それが活性度の減衰速度にあることを,これを変化させたシミュレーションで成績上位群と下位群の再生率や学習過程が的確に推定・再現できることを示し,明らかにした(日本認知科学会,2000). 3.活性度の減衰速度は課題の難易度や作業記憶容量の個人差によって大きく異なる.そこで後半は,その対策としての「原理3:各セッションの誤答数に上限を設ける」を考案・追加してLow-First方式を改良し,これが(1)課題の難易度の違い(東海心理学会,2000),(2)作業記憶容量の個人差(日本教育心理学会,2000),(3)双方(日本教育心理学会,2000)に柔軟に対応できることを実験的に示した. 現在は,改良Low-First方式の問題点である末端項目の提示間隔の少なさの悪影響が遅延再生で現れるのではないか等の問題を検討中で,現時点では悪影響よりもむしろ利点の方が遅延再生で顕著に現れること(日本教育心理学会,発表予定),特に難易度が高い場合にその利点が顕著になること(日本心理学会,発表予定)が見出されている.
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