鳥取県智頭町および京都府美山町をフィールドとして、過疎地域を活性化しようとする住民運動に研究者が実践的に関わりつつ、住民自治に向けての「民力」向上、高齢社会におけるコミュニティづくり、地方からの情報発信力の強化等を軸とする地域活性化の試みを記録、検討した。平成13年度は、3年計画の最終年度であるため、両フィールドにおける研究成果の取りまとめを目的とした。 智頭町においては、集落単位の活性化運動を行っている15集落について、開始からすでに5-6年が経過している先発9集落と、それに続く後発6集落に分け、前者については、開始当初の運動がいかに浸透・拡大してきたか(あるいは、沈滞してきたか)を検討し、後者については、運動開始に至る経緯、開始直後の展開状況、先発集落からの影響等を検討した。その結果、両者に共通して、同運動開始以前からインフォーマルな小集団による集落活性化の試行錯誤が行われており、それが同運動によって住民・行政に正式に認知されるという過程を踏んだ集落において、もっとも活性化が進展していることが見出された。さらに、活性化が進展している集落間で、集落間ネットワークを形成する動きが生まれており、その詳細についても調査した。 美山町においては、「住民参加による公設・住民営の医療をつくる会」が展開している活動を継続的に検討した。とくに、医療への住民参加をめぐって、医療関係者、行政・議会、一般住民の中にうずまいている見解の相違を明らかにした。その詰果、同じく住民のための医療をめざしている人々の中にも、医療の枠内で住民本位の医療を追及する立場、医療を軸に地域の再活性化をめざす立場、社会の民主化(権力関係の否定)の一環として医療の民主化をめざす立場という違いがあることが示唆された。
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