研究概要 |
本年度行った調査から得られた主な成果は,以下の通りである。 調査1(横断的研究):思春期年齢の児童・生徒を対象に,思春期変化の全体把握と本調査で使用する変数の検討を行った。(1)身体関連変数:身長,体重等は全国平均と大きな差はなく,標準的な身体発育状態にあり,小学校段階では女子の体格が男子を上回っていた。性的成熟や2次性徴の発現でも女子の方が成熟が早く,従来深刻な影響を与えるとされたこれらの変化についても,当然の発達であるという認知が多かった。身体意識では,女子の方が満足度が低く,関心度が高いといった従来の傾向が確認された。(2)心理的変数:これまで青年期心性を測定する変数としてはあまり使われた来なかった衝動統制に関する新たなデータが得られ,いわゆるキレル行動との関連が見いだされた。また,人間関係では友人を重要視しながらも,希薄な関係しかとれず,トラブルが生じることへの不安が高いことが示された。(3)社会的変数:生活環境指標として,コンビニエンス・ストア,ゲームセンター,カラオケ等を取り上げ,自宅近くでの軒数や利用状況を明らかにし,あわせてこれらと心理的変数との関係が検討した。(4)心理的適応変数:全体的には精神的健康は保たれているが,一部生徒に摂食障害傾向が見られ,ストレスの高さ,自己概念と自尊感情の歪みが見られた。以上の結果より,思春期年齢の児童・生徒の内外を取り巻く変数は多様であり,それぞれが影響を与えていることが明らかになったが,分析の結果,これまで示されてこなかった上述の4変数間にも関連が認められ,来年度調査においてさらに検討されることが必要とされた。
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