研究概要 |
ストレス状況では,我々はストレスを低減するために対処をしようと試みる.これまで接近型の方略や問題焦点型対処がストレス低減に有効であるといわれてきたが,その有効性は状況の制御可能性により異なることが明らかにされてきている.状況により対処方略の採用を柔軟に変更することが大切だといえる.本研究は,対処方略採用の柔軟性がストレス反応に及ぼす影響について検討する. 平成11年度は,対処方略採用の柔軟性を阻害する固執性についての検討を行った.固執の個人要因として,コントロール欲求を取り上げる.コントロール欲求はストレス状況をコントロールしようとする傾向であり,ストレス状況の制御可能性が低くなっても,状況のコントロールに固執し,柔軟な対処方略の採用を阻害すると考えられる.本研究では,検討1でコントロール欲求日本語版の標準化を行い,検討2で制御可能性の低下に伴う対処行動の選択についての検討を行った. 検討1では,コントロール欲求を測定する尺度の日本語版の標準化を行った.タイプA尺度,多次元完全主義尺度,Locus of Control尺度を平行検査として用い,1ケ月の間隔をおいて再調査を行った.その結果,平行検査による規準関連妥当性と再テスト法による信頼性が十分高いことが示され,日本語版として使用できることが確認できた. 検討2では,コントロール欲求尺度を用いて,高コントロール欲求者と低コントロール欲求者が,ストレス事態の制御可能性が低下する状況において示すストレス反応と対処方略の採用について検討した.高コントロール欲求者は,接近的問題焦点型対処を採用する程度が高く,制御可能性が低下しても採用の程度が変わらず,事態に対するコントロール欲求が柔軟な方略選択を阻害していることがわかった.ストレス反応も高コントロール欲求者で高く,対処方略の固執が高ストレスを引き起こしていることが示された.
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