研究概要 |
心的辞書の構成素に関わる諸問題を以下の5つの部門に分けて研究した。 (1)日本語の文字特性と難読児との関係について音節と形態素の処理を考察し、ドイツ語図書の1章分として発表した(P.Haase(Hrsg.))。 (2)日本語の難読児(1名)について、語の認知が高いが、文章理解力が低いという乖離現象を記述し、その乖離のecological etiologyについて新しい知見を提出した。 (3)Breedin et al.(Brain & Lang.,1998)は、失語症患者の文生成課題において、動詞が意味的に複雑であれば、その動詞が生成されやすいことを実証した。その現象の別解釈として、健常者に見られるfrequency paradox(語再認課題において低頻度語が高頻度語よりも再認成績がよいという逆説現象)の特殊例であるという論を展開した(Brain & Lang.,in press)。 (4)邦人大学生の英語基本語4,000語の語彙テストを実施し、その知識構造を分析し、心的構成素を考察するとともに、邦人の英語学習を生態学的に推論した。 (5)漢字想起実験によって漢字とその構成部首との意味的連合度を明らかにし、漢字想起メカニズムのモデルを提案した。
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