前年度に実施した先行逆説得に対する恐怖アピールの論駁効果に関する第1研究に引き続き、後続逆説得に対する恐怖アピールの抵抗効果に関する第2研究、エイズ予防教育教材の効果分析としての恐怖アピールの効果分析に関する第3研究、恐怖アピールの説得力を説明する諸モデルの比較に関する第4研究を実施した。 第2研究では、恐怖アピール(強恐怖アピール、弱恐怖アピール、無説得)と後続逆説得(同論拠逆説得、異論拠逆説得、結合論拠逆説得、無逆説得)を独立変数とする印刷メディア実験を行なった。その結果、強恐怖アピーよりも弱恐怖アピールの方が後続逆説得に対する抵抗効果が大きいこと、また、逆説得を構成する論拠のタイプによって後続逆説得に対する恐怖アピール抵抗効果に差異が生じることが発見された。 第3研究では、エイズ予防行動意思に及ぼす恐怖アピールの効果に関して、予防型のビデオ教材を実験材料として使用し、事前-事後測定計画に基づく映像実験を行なった。その結果、エイズ予防教育用ビデオ教材の視聴は、防護動機理論の提唱する7つの認知変数とエイズ予防行動意思およびエイズ感染者に対する態度との関係性を強化する方向での変化をもたらすことが解明された。 第4研究では、恐怖アピールの説得効果を説明するために提出された既存の理論・モデルの説明力を比較検討するために、6種類の脅威話題と9種類の対処行動を取り上げ、緊張低減モデル、三次元モデル、防護動機理論、脅威統制モデルの4モデルの比較を試みた。その結果、脅威統制モデルの説明力が最も高く、この説明力の高さは自己効力認知に帰されると解釈された。
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