研究5として、「受け手自身あるいは家族を脅威ターゲットとする脅威アピールの効果」に関する実験を行った。研究5の目的は、恐怖-脅威アピールを用いた説得的コミュニケーションにおいて、脅威にさらされていることを強調する対象(脅威ターゲット)に受け手自身と受け手にとって重要な他者である家族を用いた場合の説得効果とその媒介過程を検討することであった。独立変数は脅威ターゲット(受け手、家族)、脅威度(高、低)、対処行動の対処効率(高、低)であった。分散分析の結果、受け手よりも家族への脅威を強調したほうが、また、脅威度や対処効率が高いほうが、対処行動意図が大きくなることが明らかとなった。次に、脅威ターゲットごとに共分散構造分析を行った結果、受け手条件では回避的反応が対処行動意図に抑制的な影響を及ぼしていたが、家族条件ではその影響は認められず、このことが脅威ターゲットによる説得効果の差異をもたらすと示唆された。 研究6として、「恐怖アピールの説得力に及ぼす予告の効果」に関する実験を行った。研究6の目的は、説得話題のみ(TO)の予告と説得者の恐怖喚起意図(FI)の予告が、恐怖アピールによる説得前後の態度変容に及ぼす影響をについて検討することであった。説得後の予告効果を測定する恐怖アピール群では、恐怖アピール(強恐怖アピール、弱恐怖アピール)と予告(TO単独予告、TO-FI結合予告、無予告)を独立変数とし、説得前の予告効果を測定する無アピール群では、予告(TO単独予告、TO-FI結合予告、無予告)を独立変数とした。TO単独予告とTO-FI結合予告のいずれも、強恐怖アピールによる説得前の態度変容を促進し、説得後の態渡変容を抑制した。しかし、両予告は、弱恐怖アピールによる説得前後の態度変容に対してはそうした影響を持たなかった。
|