本年度は3年計画の最終年度にあたり、第2年度の研究成果にもとづき、研究協力校(公立中学校2校)において、続けて新入生と保護者対象の入学説明会の改善点の検討、および新入生対象の教育的介入プログラムの拡充をおこない、その成果について考察した。具体的な成果は次の2点である。 1、1校における前年度末の入学説明会で、一昨年度以上に中学生(特に新入生に1番身近な存在である中学1年生)が主体的に準備したプログラムを実施し、新入生と保護者にその評価を求めた。その結果、どちらからも1年生の授業風景参観や、新たに加わった部活動紹介などを含めて、肯定的な評定が得られた。 2、中学校1校の1年生を対象に、友人関係向上を目的とした社会的スキル学習を、1週間に1授業時間ずつ合計8時間実施した。前年度は研究者が4時間全部の授業を行ったが、その成果をもとに、今年度は学習内容について研修を受けた学級担任が道徳の時間に行った。社会的スキル学習を実施していない対象校の1年生と比較した結果、男子、および学習前の段階で社会的スキルの低い生徒について、目標とした社会的スキル(自己評定)の上昇が見られた。また、社会的スキルの向上による交友関係の活発化は孤独感を低減すると予想し、それについても検討した結果、男子生徒で社会的スキル学習後の低下が認められた。 以上の結果より、新入生およびその保護者にとって、中学校環境との交流を促進する好ましいアンカーポイント(中学校生活や部活動についての情報、生徒会で活躍する上級生、学習環境の体験、新入生にとっての社会的スキルなど)が提供されることの有効性を考察し、試行版ではあるがこれらの提供を目標とした教育的介入プログラムの有効性を確認することができた。
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