研究概要 |
本研究では,すべての子どもが経験する環境移行事態である中学校入学に関して,子どもだけでなく保護者を含めて,どのような適応援助が有効なのかを検討した。 まず,研究1・2で,ほとんどの中学校で実施されている新入生とその保護者を対象とした入学説明会に注目し,提供する情報の内容や提供方法を検討した。その結果,学校内や設備の見学(物理的環境)や授業風景の参観(社会・文化的環境),そして上級生である中学生を中心とした説明会プログラム(対人的環境)が効果的であることが明らかとなった(研究1)。特に新入生にとって関心の強い部活動の紹介などは,中学校入学に対する動機づけを高める効果があると推測された(研究2)。なお,新入生や保護者の中にはさまざまな意見や要望があるはずであり,今後はそうした個別の要求に応えられるようなやり方が望まれる。 次に研究3・4・5では,環境移行にともなう対人関係の諸問題の発生を予防するとともに,人格形成に重要な意味をもつ友人関係の促進を図るねらいで,新入生を対象に社会的スキル教育の導入を試みた。宿泊合宿で短期間に集中して実施する形態(研究4)では,一定の効果が見られる生徒があった。ただし,効果の持続には問題があることも明らかになった。一方,通常の授業時間に間隔をおいて実施する場合(研究3),入学直後よりも,実際の中学校生活の中で対人関係の諸問題に出合うことが増えると予想される1学期後半に実施することの有効性が示された。ただし,学外者(大学院生)による少ない授業回数(4回)では社会的スキルの向上は見られても,学校生活全般への効果は認められなかった。そこで,回数を8回に増やすとともに,学級担任による授業を行なったところ(研究5),主な目的としたスキル(男子がターゲット)の向上が,男子および学習前にスキルの低い生徒に認められた。
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