研究概要 |
平成11年度では、研究課題1「熊大式コンピタンス尺度(児童生徒用)の開発」,及び研究課題2「熊大式コンピタンス尺度(児童生徒用)の妥当性と信頼性の検証」に焦点を当てて研究を行った.平成12年度においては,研究課題3「児童生徒の問題行動との関連性及び熊大式コンピタンス尺度による問題行動(8種類)の判別分析」を行った.平成13年度では,研究課題4「登校拒否(不登校)児童生徒の心理療法過程における「コンピタンス尺度」によるアセスメント(査定)の有効性の検討」に焦点を当てて研究を行った(小・中学生5事例).資料は,心理療法(主として記憶療法)実施前,中期,終結期の3時点において,クライアント(自己評価),保護者・セラピスト(他者評価)の視点から収集された.その結果,以下の成果が得られた.(1)研究課題2では,小・中学生の「不登校経験群」の認知されたコンピタンスは,すべての因子において非経験群の得点よりも低かったが,有意差が認められたのは,認知的コンピタンスと身体的コンピタンスだけであったことが確認された.それに対して,実際の登校拒否(不登校)事例においては,すべてのコンピタンス因子において平均(2.5点)以下のネガティヴな得点の者が多かった(コンピタンスの機能不全).(2)記憶療法による治療過程においては,総合的自己評価コンピタンス(情緒安定,自信=有能感・効力感),生活コンピタンス(意志・意欲,自己管理,努力),社会的コンピタンス(社会的交流,友好性,自己開示性)の順に向上(機能改善)が認められた時期に再登校がなされることが明らかにされた.一般に,身体的コンピタンスの改善は顕著には認められなかった(研究課題3の結果と一致).また,自己評価と他者評価が不一致なケースがあったが,症状が改善するにつれて,両者の評価の差の縮小が見られた.総じて,本研究で開発した「熊大式コンピタンス尺度」は,新しい項目分析(構成成分分析)が可能である点において,他の尺度には見られない利点があることが明らかにされた(学校教育,心理臨床の場においても適用可能).
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