研究概要 |
1.目的 顔の感情の違いによる表情(楽しい表情/悲しい表情/どちらでもない表情)を呈示することにより、調査対象者の(a)感情状態、(b)好き嫌いの判断、(c)再認(記憶)の判断、それぞれにどのような影響を及ぼすかをみた。さらに、再度の呈示する場合に。顔の表情を変えた場合、好き嫌いの判断と再認の判断において、なんらかの違いがみられるかどうかを検討する。これらの結果を比較することにより、感情が潜在的にプライミングされた記憶と顕在記憶を別々に影響を及ぼすメカニズムを解明できることが予想される。 2.方法 調査対象者:実験1は、都内私立大学大学生、女性137名。実験2は、都内3つの異なる大学の大学生、男性57名;女性59名。授業内で、実験を質問紙法にて行った。 調査内容:調査内容は、大きく以下4つの課題に分けられる。(1)顔の写真の呈示課題:顔の写真の呈示した。その際,各実験とも対象者を3つの群に分けた。実験1:(1)100%うれしい顔の表情群(2)100%悲しい顔の表情群、(3)100%コントロール群。実験2:(1)80%うれしい顔と20%悲しい顔の混合群、(2)80%悲しい顔と20%うれしい顔の混合群、(3)80%普通の顔と、20%うれしい顔と悲しい顔の表情の混合群。(2)7点尺度の感情状態(ポジティブかネガティブか)を識別する尺度。(3)好き嫌い判断、7点尺度。(4)再認識判断、7点尺度。 3.結果は以下にまとめられる。 (1)前に見たことがある顔をより好きであると判断し、単純接触仮説が顔の認知でも検証された。(2)呈示された顔の表情によって、人間の感情状態を変化させることが、特に悲しそうな顔の表情呈示で大きく見られた。(3)顔の表情の呈示で、100%同じ表情を見せた場合より、20%他の表情を混合させた場合のほうが、より感情の変化をもたらすことがわかった。(4)悲しい表情よりも、うれしい表情の顔のほうが、より好感度が高いことが検証された。(5)悲しい表情とうれしい表情の顔では、再認においては差が見られなかった。
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