研究概要 |
1.目的 3種類の顔の表情(嬉しい/悲しい/どちらでもない)を潜在的に呈示することにより、調査対象者のムード、好感度、再認にどのような影響を与えるかどうかを検討する。さらに、好意度と再認において、再度呈示された時に、顔の表情が異なっていた場合どのように違いがあるのかも明らかにしたい。特に、日本人とアメリカ人に同じ調査を行い、顔の表情と記憶の測度(好感度,再認)との相互の関連を詳しく見たい。 2.方法 潜在的な感情操作のため、調査対象者を(嬉しい/悲しい/どちらでもない顔3つの表情)の呈示群に分け、(1)ダミー課題(顔の特徴についての判断課題)、(2)ムード測定を行った。さらに新たな顔写真を同数追加したものを併せて呈示し、それぞれの顔写真について(3)好感度、(4)再認度を測った。 調査対象者:日本人調査は、大学生137名(女性のみ)。アメリカ人調査では、大学生36名(男性14名;女性22名)。 調査課題:調査対象者を3群に分け、以下の写真を10枚呈示。(a)嬉しい表情80%と悲しい表情20%の群、(b)悲しい表情80%と嬉しい表情20%の群、(c)どちらでもない表情80%と嬉しいと悲しい表情を20%の群である。 3.結果と考察 日本人、アメリカ人ともに悲しい表情が、特に抑うつのムードを有意に増加させたが、嬉しい表情は有意な変化をもたらさなかった。日本人、アメリカ人とも、嬉しい顔の表情を有意により好きだと評定し、悲しい顔の表情を有意により嫌いであると評定したが、表情の違いによる再認記憶への影響は見られなかった。以上、日本人とアメリカ人では、顔の表情では、嬉しいよりも悲しい顔の表情の方が、ムードの変化に大きく影響を与えることが明らかにされた。また、顔の表情が、再認ではなく好意度のみに影響を及ぼしたことから、好意と再認のメカニズムは少なくとも一部は、異なったものであることが示唆された。
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