研究概要 |
1.目的 テレビコマーシャルは、それぞれの国において、その国独特の文化の違いを反映するように作られている。そして、各国のテレビで実際に流れているコマーシャルに対する好感度の違いは、それぞれの国の文化で異なる特性によって予測可能であると思われる。したがって、コマーシャルに対する個人の好き嫌いが、文化に特有の特性と関連していることを検証することが本研究の目的である。 2.方法 日本人の大学生とアメリカ人の大学生が、日本とアメリカで実際に流れているテレビコマーシャルそれぞれに対して、その魅力度をどのように評価するのかを見た。さらに、各調査対象者の個人における自尊心の高さ、集団における自尊心の高さを両面から測り、それらとコマーシャルの魅力度の評定との関連を検討した。 調査対象者:日本人調査は、大学生503名(女性453名;男性50名)。アメリカ人調査では、大学生26名(男性14名;女性12名)。 調査課題:調査対象者に日本とアメリカのテレビコマーシャルを見せて{それぞれコマーシャルについて魅力度と特性や内容についての評価を行わせた。さらに、個人における自尊心尺度(Rosenberg Self-esteemlnventory,1965)と、集団における自尊心尺度(Luthanen and Crgcker's collective Self-esteem Inventory,1992)を行った。 3.結果と考察 それぞれの国のコマーシャル特徴内容の分析の紳果、日本のコマーシャルは、集団志向的なアピールが多く、相互依存的な関係性をもった特徴内容であり、一方、アメリカのコマーシャルは、個人主義的なアピール点が多く、相互独立的な関係性の特徴内容であった。また、日本人調査対象者においては、個人における自尊心より集団における自尊心のほうが有意に高かった。(P<.001)。アメリカ人対象者は、個人と集団における自尊心が両方とも高かった。日本・アメリカの調査対象者において、集団における自尊心が高い人ほど、アメリカのテレビコマーシャルより日本のコマーシャルに有意に高い好感度を示した(P<.01)。逆に、個人における自尊心が高い人ほど、日本よりアメリカのコマーシャルに有意に高い好感度を示した(P<.05)。さらに、両国の調査対象者において、自尊心のあり方とテレビコマーシャルに対する魅力度の評定との間に有意な相関関係が見られた。以上のことから、文化によって異なっている人格特性が、コマーシャルに対する魅力度の評価に高い影響を与えることが示唆された。
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