小学校5年生の一年間の家庭科授業における、児童の教室環境や学習内容、教師に対する「慣れ」と学習過程との関係を明らかにすることを目的とした。年間21回の授業のVTR資料と観察資料から、教師と児童の発話・行動のトランスクリプション(言語記録)を作成し、教師の課題提示や評価方略、児童の応答や教示要求に表れる、学習スタイルおよび内容の変化過程を検討した。 授業形態の違いによる教師および児童の発話スタイルの特徴をみると、講義形態でおこなわれる授業は、ほとんどがクラス全体に向けられた教師発話で構成され、課題提示および情報提供として機能するこれらの発話は敬体表現が使用されていた。実習形態になると、教師の発話は個人やグループに対するコメントや評価として、児童の発話は情報要求や応答としての機能を果たし、いずれもその大部分に常体表現が用られていた。また、児童の学習経験が豊富になるにつれて教師の情報提供の量が減少し、児童側からの情報確認や自発的活動が増加して、教師がそれに対する評価をすることで授業が展開するようになった。また、授業活動と学校外の生活との関連づけをすることが、家庭科教科のひとつの重要な課題であるが、学習や理解を促進させるためには、児童による活動への参加や体験が大きな役割を果たすことがあらためて明らかとなった。このことは児童の授業評価のなかにも見ることができ、活動を体験することが自分たちの日常生活を再構成し、意義づける機会を与えていた。さらに、その実践的な活動のための教師の問題設定や準備状況、そして活動のなかでの児童の選択の自由度や結果に対する評価の明確性や確認の可能性などが、児童の授業に対する評価として重要なポイントであることが示された。
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