平成11年度は引き続きロールシャッハ・テストデータを収集すると共に、プールされているデータから、性別・年齢分布がほぼ等しくなるようにマッチングしてサンプリングし、被験者数260ケース(男=130、女=130)のデータを作成した。 このデータに基づいて各図版の「反応出現頻度表」「反応領域図」を作成し、それに基づいてP反応を始めとするロールシャッハ反応の検討をおこなった。その結果、暫定的なものながら、以下のような成果を得た。(1)第VII図版に関して、米国では、Exner(1986)が包括システムにおいてD1領域部分を頭部とする人間像反応をP反応としているが、上記の日本人データでは、W領域の現実的な人間の全身像の出現率が高いことが確認された。この結果は、日米の人間像知覚の相違を示すものとして意義があると考えられる。(2)全図版で顔反応が高い出現率を示していることが確認された。特に、第I図版では動物の顔反応の出現率が、こうもり、蝶・蛾のP反応に続く高い出現率であることがわかった。この結果は、現代日本人の顔に対する敏感さ、対人関係の敏感さを推測させるものとして意義があると考えられる。 今後の研究の方向としては、ロールシャッハ・テストデータをさらに増加させて知見を確実なものにしていくと共に、従来高い出現率を示していた反応と近年高い出現率を示すようになった反応を比較し、P反応を中心に、日本人の人格特徴を検討していく予定である。
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