データプールから性別による年齢分布がほぼ等しくなるようにサンプリングして作成した、男女各130ケース計260ケースのデータに基づき、各図版のロールシャッハ反応を検討した。 片口法では、第I、第III、第VII図版における、全身のリアルな「人間像」知覚がPopular反応(以下、P反応)とされ、人格の健康さと自己像や対人関係の成熟を示す1つの指標と考えられてきた。しかし、片口法以外の日本の各システムやアメリカの包括システム(Comprehensive System)では、P反応は異なっている。そこで、II、III、VIIの各図版に出現寺る人間像反応に関して、出現率、人間線のリアリティ、M反応の性質、知覚された像の性別といった観点から再検討を行った。 その結果、暫定的なものながら以下のような結果を得た。(1)第II、第III、第VII図版の人間像反応はすべてP反応の水準に達している。(2)各図版で反応内容はリアルな現実的人間像Hが大部分である。(3)各図版で人間像反応のほとんどに運動Mが伴なっている。(4)運動の内容は、第III図版では「(何かを)持っている」、第VII図版では「踊っている」といった動作が多いのに対し、第II図版では「手を合わせている」動作が大部分である。(5)人間像の性別に関しては、第II図版では性別が特定されることが少ないのに対し、第III図版、第VII図版では女性像が多く知覚されている。 特に、現代日本人のデータで第II図版の人間像反応がP反応となる点は米国人のデータと相違しており、文化差が考えられる。 今後の研究の方向としては、ロールシャッハ・テストデータをさらに増加させて知見を確実なものにしていくと共に、最終的に全図版のP反麻の再検討を行い、従来のP反応リストと本研究の結果得られたP反応リストを比較することによって、現代日本人の人格特徴を考察する予定である。
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