説得メッセージの処理及び受容に及ぼす感情状態の影響について、今年度はインターネットを利用して実験を行った。ポジティブ感情時にイメージ的処理、ネガティブ感情時に文章の精緻な処理が促進されるという仮説が立てられてきたが、ポジティブ感情の効果があいまいであった。単に、写真画像などで呈示された広告刺激を受動的に処理することが促進されるのではなく、平成11年度の実験結果からも、ポジティブ感情群は、積極的にイメージを想像するという創造的過程が促進されることがうかがえた。平成12年度には、社会心理学の実験研究にインターネットを利用する新しい試みに取り組み、平成11年度の研究の成果として得られた知見をインターネットを利用した実験において確証するような計画を立てた。感情の喚起には、作成した画像を用意し、連続的に15枚呈示することで、感情を導出した。インターネットで実験を行うことから、倫理面も配慮して、ポジティブ感情群と統制群だけを設定した。刺激の呈示形式には3種類あり、単に画像を呈示する条件、想像を促す教示を与える条件(イメージング条件)、文章だけで説得する条件であった。今回は実験参加者を授業受講者に限定し、パスワードを与えた。指定のホームページから学籍番号、パスワードを入力した後、画像が連続的に呈示され、その後、広告刺激が呈示される。用意された尺度に反応を入力した後、実験の説明のページに飛ぶように設計した。108名が無事に実験を遂行、完了し、結果として、ポジティブ感情群が文章条件で説得的影響を受けにくいという結果が得られた。ポジティブ感情時には、精緻な処理を行わないため、あまり文章を読み込まないという予測は確証された。ポジティブ感情時にイメージングが促進されるという11年度の結果の追試はならなかったが、インターネットで実験を行うさまざまな問題的と利点を検討することができた。また、今年度は、11年度の結果をストックホルムの国際心理学会議および京都の日本心理学会で発表した。
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