1.政策認知に関するフレーミング効果 本研究ではTversky&Kahneman(1981)の提唱したアジア病問題(Asian Disease Problem)を取り上げた。アジア病問題におけるフレーミング効果は、その頑健性が問題視されながら、一般サンプル調査による検証が行われてこなかったからである。スプリット法による検証の結果、(1)全サンプル・ベースでは弱い効果が認められる、(2)回答者の属性によって効果の有無が大きく異なる、(3)従来の研究では議論されていない意思決定基準の存在が示唆される、という結論を得た。 以上の結果は、政策報道内容のフレーミングが特定の社会階層に影響を与える可能性があることを実証した点で極めて重要である。また、当該分野における新しい論点を提示した点で学術的にも極めて重要である。 2.政策認知における虚偽報告 本研究では、政策に関する世論調査に虚偽報告(misreporting)が混在する可能性についても検討した。具体的には、調査時に国会で審議中の法案に対し、(1)直接賛否を尋ねる質問形式と、(2)「知っている/知らない」を聞いた後に賛否を尋ねる質問形式とを比較した。その結果、最低でも15ポイント程度の虚偽報告が認められることが明らかとなった。 以上の結果は、質問形式によるフレーミング効果の存在を明らかにした点、および、政策認知研究における方法論上の基本的問題点を明らかにした点で極めて重要である。
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