研究概要 |
姿勢は、呼吸と同様に意識的側面と無意識的側面を持ち、特に後者は身体の健康状態、精神、感情の状態等を表現している。姿勢の変化、歩行・歩法の変化はさまざまな精神の状態に影響を与える機能を持ち、姿勢や歩行が心のあり方と密接に関係していることを示唆する。これまで、姿勢の研究(鈴木:1984,1986,1988,1990,1996;鈴木・春木:1992,他)、歩行の研究(鈴木他:1996)は、それぞれ独立に研究されてきた。本研究では、その相互作用について、気分・意識性を従属変数として検討した。 被験者は、18歳から25歳までの男女大学生各20名の計40名。手続き:普段の歩き、行進風、エクササイズ・ウォーク風等の6通りの歩き方と、顔の向きは正面で背すじを伸ばす、顔の向きはうつ向きで背中を丸めた状態、の2通りの姿勢とを組み合わせ、計12通りの歩き方。歩行時の意識性・気分について、生き生きとした-生気のない、明るい-暗い、健康的な-不健康な、等20個の形容詞対を5段階でSD評定。歩き方はランダムに提示。その結果、歩き方と姿勢の違いによる意識性の評価に関する因子分析結果では、動き・明るさ因子、好み・快不快因子、まじめさ因子という3因子を抽出。 普段の歩き、行進風の歩き、エクササイズ・ウォーク風等の6通りのどの歩き方においても、姿勢を変えることによって意識性・気分の変化がみられた。顔はうつ向きで背中を丸めた姿勢での歩き方は、顔の向きは正面で背すじを伸ばした姿勢のそれよりも生気がなく、弱々しく、消極的で嫌いな歩き方であると評価されていた。
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