研究概要 |
人間は、身体と精神が一つに統合された、全体性をもつ(holisticな)存在であるが、西洋では「心から体へ、心から形へ」、東洋では「身体から心へ、形から心へ」という訓練法である。これまでの姿勢の研究(鈴木他,1984,1988,1989,1992)では扱わなかった姿勢について、対自的な意識性、身体意識の違いについて検討することとした。 被験者は、19歳から24歳の男女大学生各20名、計40名。調べた姿勢は7種類であった。両膝でひざまずく状態で目を閉じ、腕を体の横に力を抜いて自然に垂らし、首の力も抜き頭を前に垂らす姿勢、お尻をついて膝を立てて足を手で抱えて座った状態で目を閉じ、首の力を抜き頭を前に垂らす姿勢、などであった。姿勢、身体意識の評定には、意識性測定用評定尺度(形容詞対:25項目,5段階)を使用した。結果として、すべての姿勢の評定結果から因子分析により、「活力・明るさ」因子、「ゆったり・開放」因子、「ユーモア」因子の3因子が抽出された。25形容詞対の評定結果について各姿勢毎に平均値を算出。この平均値プロフィールから、3種類の姿勢が類似のパターンを示した。体幹の軸を回転している姿勢では、他の姿勢とは異なったパターンを示した。「体育すわり」に近い姿勢では、首の力を抜いて前に垂らしているのが相違点だが、自分に集中することができる可能性が考えられる。 これらの結果から、姿勢という身体の状態が精神に影響することは推測できよう。「健全な精神は健全な肉体に宿る」といわれるが、さらに、姿勢が健全であってはじめて健全な精神を保持することができるともいえよう。
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