姿勢や歩法は、呼吸と同様に意識的側面と無意識的側面を持ち、特に後者は身体の健康状態、精神、感情の状態等を表現していると考えられる。そこで、姿勢の変化、歩行・歩法の変化はさまざまな精神の状態に影響を与える機能を持ち、姿勢や歩行が心のあり方と密接に関係していることを実験的に検討した。 まず、姿勢、歩行の相互作用について、気分・意識性、身体意識を従属変数として検討した。6通りの歩き方と2通りの姿勢とを組み合わせ、計12通りの歩き方の違いによる歩行時の意識性・気分について、意識性の評価の違いを検討した。どの歩き方においても、姿勢を変えることによって意識性・気分の変化がみられた。 次に、対自的な7種類の姿勢について検討した。姿勢の上下方向と体幹の回転を含むものであった。その結果、3種類の姿勢が類似のパターンを示した。体幹の軸を回転している姿勢では、他の姿勢とは異なったパターンを示した。姿勢によっては、自分に集中することができる可能性が示唆された。 これらの結果から、姿勢、歩行という身体の状態が、精神、意識性、身体意識に重要な影響を与えることが推測できよう。人間は、身体と精神が一つに統合された、全体性をもつ(holisticな)存在であることが示された。「健全な精神は健全な肉体に宿る」といわれるが、さらに、姿勢が健全であってはじめて健全な精神を保持することができるともいえよう。
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