人口構成における高年齢者の比率の増大により、企業内でも高年齢者の扱いが重要な問題となっている。今回の研究では、2種類の作業課題を用い、高年齢者のもつ作業遂行能力、技能習熟過程と習得技能の特質について若年者との比較を行い、高年齢者の特性把握を行った。 課題は、レゴブロックを用いる3次元の複雑な組立作業(課題1)と、パソコンキーボードによるタイピング作業(課題2)の2種類である。各被験者には、各課題とも10回の連続試行を課し、作業継続による動作行動の変容も動作・時間分析法によって分析した。その結果、課題1では、若年被験者は、全員が所定時間内に10回の試行を行い、習熟も顕著で所要時間も短い。これに対して高年齢者は、10回の作業が遂行できたのは1名のみ(作業行動も若年者とほとんど変わらず)で、特に2名については4試行しか行えず、要素動作時間や作業内容への時間配分に個人差が大きかった。課題2における1分間の正確な入力数についても同様な被験者間のバラツキがみられたが、2種類の課題間で、被験者の課題対応の仕方や作業成績に共通する傾向がみられた。 今回の研究では、多方向からの動作分析に、現有の4画面マルチユニットと設備費によって購入したデジタルビデオカメラが役立ち、謝金の支払いによって、シルバー人材センターから被験者の供給を受け、ビデオテープのコマ送り再生による動作解析にアルバイトを雇って効率的に研究が遂行できた。被験者数を増やすことが今後の課題である。
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