今年度の研究では、レゴブロックを用いる組立作業課題に難易度を設定し、さらに、課題の教示条件を加えて、高年齢者のもつ作業遂行能力、習得技能の特質について若年者との比較を行い、高年齢者の特性把握を深めた。課題の難易度は、用いる材料数は同じで、2次元、3次元課題で区別、また、教示条件は、文字のみの説明書の提示、写真で作業プロセスを示した説明書の提示の2通りとした。 被験者には、課題の5回の連続試行を課し、作業継続による動作の変容を動作・時間分析法によって明らかにした。その結果、若年被験者は、作業1回目から、使用する部品を間違える、材料をずらして取りつける等のミスは発生せず、所要時間も短く、習熟も顕著であった。高年齢者群は、作業1回目には、所要時間が顕著に長いが、次第に短縮され、5回目では両群の差は小さくなった。しかし、高齢者では、説明書を見る時間が2回目から少なくなることで作業ミスは増加し、思いこみによる作業遂行傾向が見られた。高年齢者は、新しい課題対応が悪く、作業動作もゆるやかであるが、作業プロセスをいったん理解すれば、根気よく遂行しようとする点も大きな特徴であり、その際、作業課題の理解の仕方、高齢者に適した教示の仕方の工夫が重要となる。 今年度の研究も、謝金の支払いによって、シルバー人材センターから被験者の供給を受けることで、実験が継続できた。今後は、作業の理解の程度の違いと、作業への習熟との関係を明らかにすることで、高齢者の行動特性の理解がさらに深まると考えられる。さらに、被験者数を増やすことと新しい課題の設定も課題である。
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