仮想世界ゲームを用いた援助者-被援助者バイアスの検討:仮想世界ゲームを用いて、社会的同一視、責任帰属、援助意図の関連を検討した。仮想世界ゲームは、約40人の参加者が豊かな地域、貧しい地域に分かれて、実社会を模した諸活動を行う。本研究では、大学生259名を対象にゲームを実施し、データ収集を行った。データ収集は、昨年度までの研究で得られた知見の再現性を検討すると共に、自分と同地位の集団に対する責任帰属と援助に関連する態度との関係を検討することを目的とした。また、質問紙による回答に加えて、ゲーム内での行動指標を採取した。分析の結果、豊かな集団の責任帰属における集団間バイアスについては、異なる地位の集団よりも、同地位の集団に対して、より強く見られることが示された。ただし、行動指標と質問紙での回答の間には、有意な関連はみられなかったことから、責任帰属以外に行動を統制する要因の検討が必要であることが示唆された。 高齢者に対する援助意図統制要因の検討:「高齢者集団」に対する支援意図を統制している要因として、高齢者へのネガティブな態度と連動したシンボリックな態度の果たす役割について検討するための質問紙実験を行い、日本とアメリカでデータを収集した。実験では問題発生の責任の有無とターゲットの年齢を操作したシナリオに対する反応と共に、エイジズムに関連する態度尺度に回答を求めた。責任帰属と支援意図との関連については、日本のデータでは、従来の研究と一貫する結果が得られた。また、エイジズムが強い人ほど、高齢者に対する反応が極化することを示唆する結果が得られた。アメリカでのデータは、回答者数が不足しているため、追加を予定しているが、これまでの分析では、責任帰属の効果については従来の研究と一貫する結果が得られている。
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