実験1:仮想世界ゲームを用いた責任帰属における援助者-被援助者バイアスの検討 仮想世界ゲームを用いて、資源を持つ豊かな集団のメンバーが、資源を持たずに援助を必要としている集団に対して抱く態度の規定要因を検討した。その結果、豊かな集団のメンバーが、豊かさの原因を「自らの努力」に帰属している場合は、資源を持たない集団のメンバーにも自助努力を期待し、援助意図が抑制されること、その一方、豊かさの原因を自らに有利な(資源を持たない集団には不公平な)社会構造に帰属している場合は、援助意図が増加することが示された。さらに、資源を持つ集団のほうが持たない集団よりもゲーム内の資源分配に関する社会構造を「公平なもの」と評価し、資源の獲得が努力により統制可能であると認知していることが示された。このような結果は、資源を持つ集団メンバーが自らの豊かさを「努力」という統制可能な原因に帰属することにより、自らの優位性を正当化してしまう過程の存在を示唆している。 実験2:保守-革新的態度が、責任帰属と援助意図に及ぼす影響の検討 保守-革新という政治的態度が、困難な状況にあり政府の援助を必要としている人に対する責任帰属や援助への賛同に及ぼす影響を、大学生・成人を対象に検討した。アメリカでの先行研究では、革新的態度を持つ人のほうが帰属・援助ともに寛容な態度を示すことが明らかとなっている。しかし、今回得たデータからはそのような傾向は見られなかった。また、保守-革新と連動して変動すると考えられる「伝統的価値観」の効果についても検討したが、同様に影響が見られなかった。したがって、日本人の「公的資源分配」への態度とそれに関連する責任判断を規定するイデオロギー変数として、どのようなもの有効であるかについて、今後、探索的な研究を重ねる必要が示唆される。
|