本研究は、認知的なアプローチをとる援助行動研究が重視してきた「責任帰属と援助意図」の関連についての知見に基づき、外集団に対する援助や支援を対象とし、以下の4点に関する研究成果を得た。 1)援助に関わる認知的要因と感情的要因の基礎的な相互作用過程:援助行動意図に関わる基礎的な心的過程、特に、認知と感情の相互影響過程を明らかにするとともに、具体的な対人相互作用場面を設定したうえで、失敗に関する責任帰属や相互作用相手の感情表出に関わる情報を操作した実験を行うことで、両者の関係を明らかにした。 2)仮想世界ゲームを用いた集団間援助の規定要因:現実社会での援助事態を模した仮想世界ゲームを用いて、豊かな地域から貧しい地域への支援を題材として、責任帰属、集団同一視、援助意図、集団間関係認知などの変数間の関係を明らかにし、集団間援助の背景にある心理過程を解明した。 3)まちづくり場面を題材とした、集団間協力、支援行動意図:地域環境整備やまちづくりにおける、限られた資源の集団間配分と、地域という集団間の協力や支援に焦点を当て、まちづくりに関与する成人を対象として、地域への同一視や責任帰属、地域間葛藤と協力に関する態度との関係を検討した。 4)特定の特性をもった集団に対する支援と公共政策への含意:高齢者介護に携わる人たちや女性など、特定の特性をもった集団に焦点をあて、支援に関わる心的過程を、認知-感情の相互作用、責任帰属などの基礎的過程の点から検討するとともに、その知見の含意を、福祉に関する公共政策に焦点をあて議論した。
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