研究概要 |
1.ことばの獲得や言語教育に関する予備調査 予備調査として、京都市内のA聾学校における幼稚部における言語教育の既存プログラムを軸に、一般聾児の早期教育における「抽象概念」獲得に関する聾学校(名古屋市など)のプログラムの検討、並びに既に成人に達している聾成人におけるリトロスペクティブな聞き取り調査を行った。調査された聾学校幼稚部においては、「色名」といった対象に対する理解のプログラムはごく初期から行われているものの、その他の抽象的概念(とりわけ時間など)については特に組織的な教育方法は見られなかった。成人においては、形容詞などについて最初に習得した際の特定対象を離れた汎用的な使用については、遅い時期(青年期以降)に初めて理解したといったエピソードがいくつか示された。調査はさらに学校や組織を拡げて継続中である。 2.予備実験とプログラム作成 (1)高次条件性弁別課題を用いた抽象概念についてのアセスメントならびに訓練の可能性について、a)障害のない一般幼稚園児、b)一般小学生児童、c)一般成人、d)知的障害と聴覚障害を併せ持つ成人を対象に、「時制文脈(まだ/おわり)」の理解と使用の可能性が検討された。小学生では英語(before/after)、一般成人では「無意味つづり」と「無意味(架空)手話」、幼稚園児ならびに知的障害と聴覚障害を併せ持つ成人では、ひらがな、手話が用いられた。その結果、d)の聴覚障害と知的障害を併せ持つ成人以外の対象者(a,b,c,)では、高次条件性弁別課題によって「まだ/おわり」についての理解達成が可能であったが重複の障害を持つ成人では完全に理解することはできなかった。(2)プログラム作成:文脈理解のための静止画像段階までのソフトを完成した。
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