研究概要 |
本年度は、色と色単語のストループ課題に色連想語を加えて、熟達度ごとに干渉量の変化を調べた。色単語と同様の干渉が色を連想させる単語でもみられることは、意味関連効果とよばれている。バイリンガルの被験者を用いた実験では、第二言語の修得度が高い場合は、第二言語の言語内干渉においても第一言語と同様の意味関連効果がみられている。しかし言語間干渉では、全く意味関連効果がみられなかった。同様の結果が第二言語の修得度が低くてもみられるかどうかを検討した。被験者は大学生19名。熟達群(4名)と非熟達群(15名)とに分けられた。刺激材料は「赤・青・黄・緑」という色単語に単語名とは異なった色をつけたもの、それぞれの色から連想される単語「火・海・バナナ・草」に連想される色とは異なった色をつけたもの、英語の色単語「red,blue,yellow,green」に単語名とは異なった色をつけたもの、それぞれの色単語から連想される英単語「apple,sky,lemon,grass」に連想される色とは異なった色をつけたもの、赤・青・黄・緑のカラーパッチ(コントロール条件)の5種類であった。各条件について英語で反応する場合と日本語で反応する場合があった。その結果、熟達度によるグループでは、熟達群も非熟達群も言語間よりも言語内の干渉の方が多かった。しかし、英語に熟達したグループでは、日本語で見られるのと同様の意味関連効果が英語でもみられるが、非熟達群では意味関連効果までは見られない可能性があることが示唆された。これは第二言語における意味記憶のネットワークモデルが、熟達群ほど形成されていないことを示しているといえる。意味関連効果が意味記憶のネットワークモデルで説明できることから考えると、意味関連効果の大きさが異なることは、異なるネットワークモデルを持っている、すなわち言語ごとに独立した記憶表象を持っている可能性が考えられるのである。
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