研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、公正感と価値の結びつきを規定する要因として、社会的同一視程度の影響を検討した。検討方法は、(1)前年度の調査データの分析、ならびに、(2)大学生を被験者とした実験によった。(1)平成11年12月に京都市有権者1115名を対象とした国政評価をテーマとするデータ(有効回答数698、回収率62.6%)を、潜在構造分析用パッケージAMOS ver.4を用いて分析した。モデル1では、関係性と道具性それぞれの価値評価が、社会的同一視程度を媒介とし、向集団行動としての政策支持に影響を及ぼすモデルを検討した。社会的同一視程度の測度として集団自尊心を用いた場合、モデルの適合性指標は、CMIN=794.568(df=185,p<0.0001),CMIN/df=4.295,NFI=0.979,CFI=0.984,RMSEA=0.069であった。モデルの適合性がほぼ認められたことから、次に、社会的同一視の程度により回答者を3群に分け、手続き的公正が政策支持を媒介するモデルを、群ごとに比較した。3群同時分析の結果、モデルの適合度はCMIN=730.661,(df=300,p<0.0001),CMIN/df=2.436,NFI=0.979,CFI=0.984,RMSEA=0.047となり、よい適合であることが示された。同一視程度による群間の差異として、特徴的であったの点を以下に示す。1)道具性評価の手続き的公正に対する影響は、同一視程度高群で、際だって高い負の効果を持っていた。2)関係性評価の影響は、中程度の同一視群で、もっとも低かった。3)政策支持に至るモデルの説明率は、同一視程度の高群と低群にくらべて、中群で低かった(高群55%,低群63%に対し、低群27%)。これらのことから、同一視程度中群は、高群・低群とは様相の異なる認知過程で、国政場面を評価していると考えられる。また、高群と低群の表面上相似は、動機付けの違いによって解釈しうると思われる。(2)に関しては、研究期間終了後の報告書に記す。
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