さまざまな対人関係的文脈が自己評価にどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、より具体的には、親密な関係が、自己評価の極端な低下を防御する効果するという仮説を検証することを本年度の目的とした。そこで、親密な親友同士ないし非親密関係(未知)他者2名を1組として、協同課題に従事させ、成功・失敗を操作した。その後、自己および他者評価を行わせ、初期段階に比較して、その変動を測定した。親密関係にある実験参加者ペアでは、そうでない参加者ペアの場合に比較して、たとえある課題における自分の失敗が友人に露呈しても、それまでの友好的な関係の中で、自分が十分に相手から肯定的にみなされていることを確信しているために、言い換えれば、自分と友人である他者との間で、自己の価値が共通実感(shared reality)として確定しているために、ある課題での失敗による自己評価低下が少ないであろうと予測された。 奈良大学において、学生2名をペアとして、親密群17組、非親密群18組を参加者に実験を行った。しかしながら、全組に対する実験が終了した後、各組に対しての実験終了時におこなう「デブリーフ」の内容が、密かに、参加者プールである心理学受講生間に流布し、実験参加者の間に知れ渡っていた可能性のあることが判明した。したがって、実験データの信頼性が低く、また今年度中は同じ学生プールから参加者を募集しても実験は無効になるだろうと判断された。 来年度、デブリーフは全実験終了後とするなどの方法的改善を加え、改めて新しい実験参加者を対象として、おこなうこととした。
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