本研究は、主に非言語的データ(自己写真)をもとに大学生の目標と行動の関係を比較することを目的としていた。12年度は日本におけるデータの収集を行った。13年度はStanford大学のLauren Shapiro氏に協力を依頼し、米国におけるデータの収集を行った。調査の内容は以下のようなものであった。(1)まず被験者の目標や普段の行動を言語的に記述してもらう質問紙調査を行った後、(2)2週間の自己写真撮影をおこなった。すなわち、被験者はアラームとカメラを携帯し、一日5回ランダムな時間に鳴るアラームの合図に従って自分の現在の行動をあらわす写真を撮った。このような方法によって得た70枚の「自己写真」を行動に関する非言語的データとして分析した。(3)写真撮影の後、今度は「写真にあらわれた」自分の行動や、自分の目的を記述する質問紙調査を行った。実施期間は2000年11月〜2001年3月の間であり、被験者は大学生合計30名であった。 分析の観点は、目標を「達成」として表現するか、「プロセス」として表現するかによって、言語的データと写真データを比較することが中心である。この観点を確立するため、試みに園田・ロイヤス(1999)、ロイヤス・園田(1999)で得た日米の被験者の20枚の自己写真を再分類したところ、日本人の写真はきわめて演出的であり、時間の経過が読み取れない、写真の中で物事が「完了」しているかのようなものが多いが、米国人の写真は演出が少なく、時間経過中(プロセス的)であることが示された。この結果は、Sonoda・Leuers・Shapiro(2000)にまとめている。すなわち従来日本人は目標を明確に語らず、プロセス重視であるといわれてきたが、写真撮影法では、日本人が必ずしもプロセス的ではないことが示唆された。また同様の観点は、コラージュを使用した将来表現の研究においても示された。この結果は園田・ロイヤス(2001)にまとめている。本研究のデータもこの線に沿って解釈できる。
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