更年期には、不定愁訴を中心とした更年期症状が問題となりやすい。本研究では、得られた調査対象の一部(n=229)を用いて、更年期の適応状態に関連する心理・社会的要因について検討した。主な結果は以下の通りである。 1.更年期症状、否定的な更年期観、自己効力感において、学歴による違いが見られ、高学歴者の方が自己効力感は高く、更年期を否定的にとらえず、更年期症状も軽い傾向が示された。これは、教育を受けることにより個人の問題解決能力が向上し、また偏見から生じる閉経による喪失感を感じることも少なく、更年期を積極的にとらえられるためではないかと思われた。 2.仕事の有無による更年期適応状態の違いはみられなかった。ライフスタイルとの関係でも、仕事重視か家庭重視かとの間には関連は見られなかったが、自分を犠牲にする傾向の強い人ほど、更年期症状やうつ症状が強い傾向が見られた。すなわち仕事をしているか否かよりも、職場や家庭で自己を生かしているか埋没させているかが問題であることがわかった。 3.自分を大切にしたライフスタイルや良い夫婦関係は、問題解決への自信を高め期待できる対人サポートを維持させることにつながり、個人の心理的適応資源を高める。適応資源が豊富な人は、問題が生じても解決できるという自己信頼があるので、日常ストレスを感じることが少なく、更年期を否定的に捉えることもなく、更年期適応状態もよい。以上のモデルを作成して、共分散構造分析を行ったところ、高い適合度の値が得られた。そこで、更年期の適応を高めるためには個人の適応資源を高めることが必要であり、そのためにはライフスタイルや夫婦関係の見直しが重要であることがわかった。以上の結果は、論文として投稿を予定している。 また本年度は、更年期にあたる調査対象者へのフィードバックを目的として、リーフレットを作成し結果(n=776)の一部報告を行った。
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